世の中、どんどん便利になっていっていますね。
ほとんどのものがネットで買えたり、情報を得たり、送金などもできます。
そのときに、どうしても名前や住所、電話番号などの情報を入力しないといけませんが、その場合のプライバシーの保護についても、厳しく管理する傾向がどんどん強まっていますね。
ネットだけじゃなくても、個人情報は保護しないといけない、という考えが強くなっているように感じます。
一方で、犯罪も巧妙化していることもあり、セキュリティに対しての意識も高まっているとも思います。
最近、こういった傾向のなかで、プライバシーとセキュリティについて考えさせられることがあったので、ここで紹介したいと思います。
地方のセキュリティ体制
私の祖母が、地方のかなり奥のほう、いわゆるイナカに住んでいて、たまに顔を見に行くのですが、そのときにいつも、イナカって、独特のセキュリティが成り立っていているな、と感じます。
(“セキュリティ”といえば、最近ではサイバー攻撃に対するセキュリティをイメージする人も多いと思います。
が、ここではもう少し広く、地域レベルでの防犯、生活の安全も含めた広義のものと考えてください。)
驚いたのは、まず、出かけるときや寝るときにドアに鍵をかける習慣がない。
これは、誰もわざわざ入って来ないでしょ、という感覚もあるかと思いますが、それだけではなく、地域全体のセキュリティが機能している面があるからだと思います。
そこの地域に住む人たちは、どこに誰が住んでいて、どんな家族構成で、どんな仕事や生活をしているか、だいたい把握しています。
なので、もしそこの住人じゃない人が家に入ろうとしていたら、周りの人がすぐに異変に気付く。
そもそも、住人同士はお互い見知っているので、知らない人が歩いているだけ違和感があるようです。
私も、祖母のところに行ったときに、家の付近を歩いていると、『誰だあいつは?』という目で見られます。
そして、時には、直接『どこの誰だ』と尋ねられて、『あそこの〇〇の孫で、いまどこどこで仕事していて、休みでちょっと顔を出しているんですよ』とひとしきり自己紹介をします。
そして、『そうかそうか』と納得されたら解放されます。
こういうとき、このコミュニティのセキュリティを感じます。
また、家の鍵を閉めないのは、もう一つ理由があるようで、
この地域に住む人たちは高齢のかたが多いのですが、毎朝起きたら一回外に出て隣の家の人などと挨拶をするそうです。だいたい決まった時間に。
なので、もし隣の人がいつまでも出てこないと、心配になって様子を見にいくそうです。
こうやって、お互いがお互いの安全を確認しあっているんですね。
都会はプライバシー重視か
一方、都会で暮らすと、近所の人と会話することもまれじゃないですか?
マンションやアパートなんかだと、どんな人が住んでいて1人なのか家族なのか、も知らないことが多かったりします。
そして、もちろんお互いの生活に一切干渉しない。
プライバシーを尊重したライフスタイルだと思いますし、何も問題が起こらなければ、あまり他人に干渉されないこのスタイルのほうがラクだと感じる人も多いでしょうね。
プライバシーとセキュリティはトレードオフ
対照的な例を紹介しましたが、こう考えると、プライバシーとセキュリティは、相反する側面を持っていることがわかります。
と、いうのは、都会の例のように、周りの人との関わりがあまり無い場合、他人の干渉を受けることも少ないでしょうし、こちらから積極的に干渉することも、まずありませんね。
そのとき例えば、隣の部屋に知らない人が入ろうとしているとき、それが住人なのか、その家族なのか、実は不審者なのか、わからないし、声もかけないと思います。
そういう意味では、イナカに比べてセキュリティは低い、と言えます。
その代わりに、鍵を厳重にしたり、オートロックなどのツールで対応したりしますが、それで十分かどうかはわかりません。
逆に、イナカでは、先ほどの例のように、知らない人が居るとすぐにわかるということで地域のセキュリティが保たれています。
ただ、その分、みんなが自分のことを知っている、ということであり、個人のプライバシーを保護する意識が薄い、とも言えます。
実際、イナカでは、かなり他人の事情にクビを突っ込むような傾向にあります。
もしプライバシーを完全に保護する、となると、自分の情報は一切外に出さない、ということです。
そうすると、何かあっても外からの援助は期待できません。自分の身は自分で守る、という前提になりますね。
究極的に突き詰めると、そこに居るのが誰かもわからないので、警察に助けを求めることもできないことになりますね。
もちろん、それで良いはずはありません。
でも、逆に、では完全に犯罪を防止する世の中にしようとすると、あちこちに防犯カメラを設置し、常に監視している、という状況になるかもしれません。
そうすると、プライバシーは侵害されますね。
ちょっと極端な例になりましたが、要するに、プライバシーとセキュリティは、両方を同時に完全に守る、というのは不可能、ということです。
まとめ
と、いうことで、個人のプライバシーを最優先で重視すると、地域やコミュニティでの相互セキュリティや共助ということがほぼ成り立ちません。
一方で、コミュニティでの共助を重視すると、ある程度、個人のプライバシーは犠牲にしなければ成立しませんね。
個人のプライバシーと、地域のセキュリティ、どちらも大事だと思いますが、完全には両立しないと思います。
個人のプライバシーを完全に守りたいなら、自分の安全は自分で確保し、誰からも保護を受けない覚悟が必要ですし、地域や公的機関からの保護を期待するなら、ある程度の個人情報の共有は不可欠でしょう。
なので、どっちを優先するのか、を考えないといけないと思いますが、ゼロ/ヒャクも、ヒャク/ゼロ も有り得ないでしょうね。
なので、何を一番大事にするのか、また、どの程度重視してどの程度妥協して、どのようにバランスしていくのか、ということを考える必要があります。
これだけ便利なツールやシステムが発達し、それに伴いプライバシーやセキュリティが脅かされるリスクも増えてきているいま、こういうことを一度、ちゃんと考えてみるときなのではないでしょうか?
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