顧客ポートフォリオマネジメント(3)

『顧客ポートフォリオマネジメント』(Customer Portfolio Management、以下CPM)についての、過去の2つの記事からの続きの内容です。

過去記事:『顧客ポートフォリオマネジメント(1)』 では、認識を共有するための事前説明のような内容を、

『顧客ポートフォリオマネジメント(2)』 では、その定義や意味などについて紹介しました。

そして、今回は、CPMにおける顧客フォローの優先順位と方法について紹介したいと思います。

過去記事でもお伝えしたように、この内容は、『社長が知らない秘密の仕組み』(橋本陽輔:著、ビジネス社)という本の内容をベースにしています。

目次

アプローチの優先順位を間違えるな!

 前回の記事(『顧客ポートフォリオマネジメント(2)』)で、それぞれの顧客層へのアプローチ、特に離脱客に対しては、

 優良客>コツコツ客>よちよち客>初回客   であることを紹介しました。

ここでは、そこからさらに進め、現役客も含めた全体での優先順位について触れていきます。

どれくらいの人がアプローチに応え、商品・サービスを購入してくれるのか、を示す「反応率」という数字があります。

下表がその一例です。

これは、各顧客層の人たちに商品案内や新商品情報を伝えたときに、「商品を買ってくれる率の目安」です。

たとえば、「優良現役:20%」となっていますが、これは、「優良現役客」100人に商品案内を出したところ、1回の案内につき、平均して20人が買ってくれる、ということです。

同じように、「優良離脱客:10%」は、離脱した100人中、平均10人が買ってくれるということです。反応率は、現役の半分、ということになります。

ここで面白いのは、初回客を除く、各現役層の反応率の半分が、離脱客の反応率になっていることです。

また、「コツコツ現役客」と、「優良離脱客」が、同じ反応率になっていることにも注目です。

つまり、「コツコツ現役客」と同じ反応率で、「優良離脱客」が“現役に復帰する” ということです。

そして、ここが大きなポイントなのですが、「優良離脱客」が現役に復帰した場合は、再び「優良現役客」の行動に戻る可能性が高い、ということがわかっています。

これらのことから、「優先離脱客」へのアプローチが最優先であることがわかると思います。

“宝の山”である「コツコツ客」を「優良客」に育てることも大事なのはもちろんですが、反応率の数値から見ても、最優先順位としては、「優先離脱客」を選択するほうが良いでしょう。

初回客は離脱させない!

もうひとつのポイントは、「初回客」の反応率です。

ほかの顧客層に比べて、「初回客」の反応は非常に低いことがわかります。

現役客でも1%、離脱客になると、その5分の1の0.2% まで下がります。

つまり、「初回客」100人にアプローチしても、1人買ってくれるだけです。そして、「初回離脱客」に至っては、1,000人にアプローチしても、2人しか買ってくれません。

「初回り脱客」には、いくらアプローチしても、戻ってくれる可能性はほとんどない、ということになります。

言い換えれば、「初回客」は、離脱させてはいけない、ということです。
したがって、「初回客」を、「よちよち客」に育てることが非常に重要だということがわかると思います。

これができなければ、CPMは成り立ちません。

なぜなら、「初回客」が離脱してしまったら、その先、「コツコツ客」「優良客」は永遠に生まれないからです。

「初回客」を「よちよち客」に育てるには

 では、どういうやり方で「初回客」を「よちよち客」に育てていくのか。

ここで、書籍『社長が知らない秘密の仕組み』で説明されていた方法を紹介します。

① 2週間に1度、ハガキを出す(3ヶ月間で6回送る)
② 1ヶ月に1度、封書を出す(3ヶ月間で3回送る)
③ 3ヶ月後に、季刊誌またはニュースレターを送る

と、いうことで、これは実際におこなわれてきた方法の一例ですが、新規顧客になってから90日間の間に合計で、10回のアプローチをおこなうのが大事だということです。

(本のなかでは、そのアプローチの方法についても詳しく説明してくれていますが、ここでは割愛します。)

既存顧客フォローの重要性

「なぜ、そこまで既存顧客をフォローする必要があるのか?」 という問いに対する答えは、

「人間は無意識に、過去にとった行動をとりがちである」という習性があるからです。

「優良客」なら「優良客パターン」、「コツコツ客」は「コツコツ客パターン」といった、決まったパターンを繰り返す傾向にあります。

だから、離脱客は、「優良客」→「コツコツ客」→「よちよち客」と優先順位をつけてフォローすることが重要です。

と、同時に、「初回客」は、「最初から順番に購買プロセスを上がっていく」必要があるため、フォローコストをしっかりとかけないと、次の層に育っていきません。

ついつい、離脱客(買わなくなった顧客)を無視して、新規顧客を探したくなるものですが、離脱客が多いというデータがあるなら、離脱客を戻すのに力を注ぐ必要があるのです。

顧客ポートフォリオは、顧客から見た自社(自身)の成績表

CPMの3大目的は、

① 自社(自身)に継続的な利益をもたらしてくれる顧客層を知ること
② 顧客層に応じて適切なアプローチをすること
③ 自社(自身)から離れてしまった顧客を呼び戻すこと

です。

目的① の顧客層とは、もちろん「優良現役客」です。これを全体の20% 以上にすること、そしてその20%の「優良客」によって、80%の売上をもたらすのが、ビジネスの構造上もっとも経営が安定した状態と言えます。

目的②の、顧客層に応じたアプローチのなかで、最も重要なのは、“ファンになってくれるまで繰り返しコミュニケーションをとること” です。

顧客が望んでいる情報やサービス、サプライズを届けることができれば、コミュニケーションをとればとるほど、顧客との距離は近づきます。

そして、その結果として、目的③の、「離れてしまった顧客を呼び戻すこと」が可能になります。

ここで、1つ忘れてはいけないことがあります。

それは、このデータは、「顧客から見た自社(自身)の姿」であって、「自社(自身)から見た顧客の姿」ではない、ということです。

つまり、円の大きさや位置は、顧客からの評価です。

毎月、顧客から評価を受け、成績表をいただいている、ということですので、それを見て、どこが良くなって、どこが悪くなったのか、を見極める。

それがわかったら、悪いところは改善して成績を上げていくように努力する、というのを続ければ良いのです。

まとめ

今回は、CPMにおける、顧客アプローチの優先順位と方法について紹介しました。

  • フォローの最優先は「優良離脱客」
  • 「初回客」は離脱させない。推移率:50%を目標とする
  • 「初回客」を「よちよち客」にするためには、90日間で合計10回のアプローチ
  • 顧客ポートフォリオは、顧客から見た自社(自身)の成績表

次回記事では、CPMの分析のやりかたについて、少し詳しく紹介したいと思います。

参考文献

『社長が知らない秘密の仕組み』(橋本陽輔:著、ビジネス社)
https://www.business-sha.co.jp/books/category04/item_a000030

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