『顧客ポートフォリオマネジメント』(Customer Portfolio Management、以下CPM)についての、過去の3つの記事からの続きの内容です。
過去記事:『顧客ポートフォリオマネジメント(1)』では、認識を共有するための事前説明のような内容を、
『顧客ポートフォリオマネジメント(2)』 では、その定義や意味などについて、
『顧客ポートフォリオマネジメント(3)』 では、CPMにおける顧客フォローの優先順位やその方法について紹介してきました。
そして、今回は、CPMの分析について紹介していきます。
過去記事でもお伝えしたように、この内容は、『社長が知らない秘密の仕組み』(橋本陽輔:著、ビジネス社)という本の内容をベースにしています。
CPMで自身(自社)の姿を読み取る
まずは、ひとつの例をもとに、CPM分析のやりかたを説明します。
下のような集計結果(仮にA社のデータ)があったとします。
※ 集計のやりかたについては、過去記事:『顧客ポートフォリオマネジメント(2)』をご参照。
この結果表をグラフにすると、下のようになります。
縦軸が、顧客ごとの平均購買金額、横軸が平均在籍期間になります。
また、円の色は、表のそれぞれの顧客層(ランク)の色と合致し、円の大きさがそれぞれの層(ランク)の人数をあらわします。
ここから、分析のしかたについてのポイントを紹介します。
CPM分析のポイント5つ
ポイント1:それぞれの円の大きさを見る
まず、初回客以外の層(ランク)について、それぞれの現役と離脱の円の大きさを比べます。
現役の円 > 離脱の円
になっていたら合格です。逆に、
現役の円 < 離脱の円
になっていたら、その層の顧客がどんどん離脱していっている、ということなので、早急にフォローし、離脱を防ぐ対策をしないといけません。
ポイント2:在籍期間と売上の関係を見る
次に、現役客の在籍期間について、ひとつの例で見てみます。
これで見ると、「初回客」が「コツコツ客」になるまでに、1人あたりの在籍期間が平均16.3ヶ月かかっているのに対して、「コツコツ客」が「優良客」になるまでの期間は平均6.2ヶ月です。
在籍期間に対して売上は、というと、「コツコツ客」の1人あたりの平均売上3.6万円に比べ、「優良客」は24万円。約6.7倍も伸びています。
これは、「コツコツ客」に対して、いま買ってもらっている商品(サービス)に加えて別の商品も買ってもらうなどのクロスセリングをおこない、それが成功した、ということになります。
これを見ると、「コツコツ客」へのクロスセリングの効果、重要性がわかると思います。
ポイント3. 「優良現役客」が全体に占める割合を見る
引き続き、A社のデータです。
この表を見ると、「優良現役客」の人数は、顧客全体の約21%を占めています。また、売上金額は、売上全体の約71%を占めていることがわかります。
「パレートの法則(80:20の法則 = 上位20%の顧客が売上の80%を占める)」というのがありますが、これは、それに近い状態になっています。
すべてにおいてそれが成り立つとは限りませんが、自身の事業で、「優良現役客」が全体顧客数のどのくらいを占めているか、を把握し、それを20%にすることを目指すことが一つの課題と言えそうです。
ポイント4. 「優良離脱客」による損失を計算する
A社のデータでは、「優良離脱客」が59人います。人数からいえば、全体の1.5%に過ぎませんが、「優良離脱客」は、他の顧客層(ランク)の離脱に比べると、1人の重みがまったく異なります。
グラフで「優良離脱客」の在籍期間を見てみると、1人あたり平均13.2ヶ月です。その期間に、14.5万円の買い物をしてくれています。
一方、「コツコツ離脱客」の平均売上金額は2.8万円。
これを計算すると、14.5 ÷ 2.8 = 約5.2 となります。
つまり、「優良離脱客」は、「コツコツ離脱客」の5〜6人に相当する、ということです。
このことからも、まず、「優良現役客」の離脱を防ぐこと、さらに「優良離脱客」を現役に戻すこと、が最優先事項であるとわかります。
ポイント5. 時系列で円の推移を見る
これらのデータを毎月集計し、グラフにした顧客ポートフォリオを見比べていきます。
まず、「優良現役客」の円に注目してください。
たとえば、8月から9月の変化が、グラフのように、
・ 円の直径が大きくなった → 「優良現役客」の人数が増えた
・ 円の位置が右に移動した → 「優良現役客」の在籍期間が長くなった
・ 円の位置が上に移動した → 「優良現役客」の購買単価が高くなった
ということであれば、現在、的確なフォローができている、ということになります。
逆に、円が小さくなっていたり、左下に移動したりしているとすれば、「優良現役客」が離脱して、「優良離脱客」が増えている、ということになります。
この場合、早急に「優良離脱客」に戻ってきてもらう対策が必要です。
同様に、「コツコツ現役客」についても見ていきます。
この場合、円が大きくなっていなくても、それ以上に「優良現役客」の円が大きくなっていれ、「コツコツ客」が「優良客」に育った、ということなので問題ありません。
ただし、「優良現役客」は増えていなくて、「コツコツ離脱客」が増えていれば、「コツコツ現役客」に適切なフォローができていない、ということなので、早急な対策が必要です。
さらに、「初回客」の推移も重要です。
「初回客」は、そのあと、「よちよち客」に移行するか、「初回離脱」となるか、のどちらかですね。
「初回客」が、放っておいても自動的に「よちよち客」になってくれれば良いのですが、通常そうはいかず、ほとんどの会社では、20-30%程度しか移行しておらず、残りの70-80%は「初回離脱客」となっているようです。
また、ここで離脱した顧客は、その後の反応率も非常に低いことから(前回記事:『顧客ポートフォリオマネジメント(3)』参照)、この時点で離脱した顧客が復帰することはほぼ無い、ということになります。
CPM分析では、「初回客」が「よちよち客」に進む推移率が50%以上であることを目標としています。
つまり、最低でも、2人に1人は、リピートして「よちよち客」の層に行ってもらわないといけない、ということです。
そのために必要な施策が、前回記事:『顧客ポートフォリオマネジメント(3)』でも紹介した、合計10回のアフターフォローになります。
まとめ
今回は、顧客ポートフォリオの分析ポイント5つについて紹介しました。
- ポイント1:初回客以外の層(ランク)について、それぞれの円の大きさを見る →現役の円 > 離脱の円になっているか。
- ポイント2:それぞれの顧客層(ランク)について、在籍期間と売上の関係を見る →「コツコツ客」へのクロスセリングが重要。
- ポイント3:「優良現役客」が全体に占める割合を見る →「優良現役客」を、全体の20%以上にすることを目標とする。
- ポイント4:「優良離脱客」による損失を計算する →「優良現役客」の離脱を防ぐこと、さらに「優良離脱客」を現役に戻すこと、が最優先事項。
- ポイント5:時系列で円の推移を見る →「初回客」が「よちよち客」に進む推移率が50%以上であることを目標とする。
参考文献
『社長が知らない秘密の仕組み』(橋本陽輔:著、ビジネス社)
https://www.business-sha.co.jp/books/category04/item_a000030
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