事業計画書の種類と落とし穴

 新たに事業を始めるときや、事業年度が新しくなるときなどに、事業計画書を作成しますね。

 事業計画書とは、事業を開始する際に作成するビジネスプランのことで、具体的には、事業の概要やビジョン、目標、市場分析、など、ビジネスを遂行するための戦略や計画が詳細に記載されます。

 計画がどうして必要なのか、については、以前の記事:「目標や計画は本当に必要か?」にも書いていますので、そちらも参考にしてみてください。

 ここでは、事業計画書の本来の役割と、用途や目的によっていろいろな種類がありますので、そのあたりについて紹介したいと思います。

目次

事業計画書は、ゴールに到達するための手引き

 本来、事業計画書とは、これから進める事業の目標・目的を設定し、それを達成する過程でどのようなことが必要か、どんなコストやリスクが考えられるか、などを整理して、目的の達成確度を上げるためのものです。

(目標の設定のしかたについては、以前の記事:「目標や計画はどう立てるのか?」にも書いてあります。)

 そして、事業は、会社やチームなど、複数の人が関わって進めることが多いと思います。

その際に、メンバー全員が目標を共有し、それぞれの役割を把握して同じ目標に向かうためのマニュアルとしての役割もあります。

 また、事業が開始したあとも、当初に立てた目標や計画、スケジュール通りに進んでいるか、を定期的にチェックして、計画から逸れていたら修正する、というためにも活用できます。

 このように、事業計画書とは、本来、事業のゴールを明確に設定し、そこに到達するための手順や必要なもの、役割、などを示し、計画した通りに事業を成功させるためのものです。

 したがって、それに相応しい内容が盛り込まれていて、誰が見ても理解できるものになっていないと、事業計画書とは言えません。

体裁だけキレイに整えても意味が無いのです。

事業計画書に必要な内容・項目

 事業の内容や状況などによって、事業計画書の内容も多少変わりますが、どういうケースでも、計画書の本来の役割を果たすために最低限必要な内容・項目を簡単に紹介します。

(ここではザックリ簡単なことを紹介します。詳しいことは、機会があれば別で紹介したいと思います。)

1) 事業の概要・ビジョン
 どんな事業なのか、の説明と、なぜいまこの事業をやるのか、これをやったら(自社にとって、関わる周りの人にとって、世の中にとって)どんな良いことがあるのか、など。

2) さまざまな分析
・ 販売する商品・サービスについての分析
・ 環境(自己、市場、競合)の分析

(これについては、以前の記事:「アイデアをカタチにできない!?」に詳しく書いてあるので、そちらも参照ください。)

3) マーケティング戦略・活動計画
 分析結果を踏まえて、自社の強みを活かしてどのような戦略を立てるか、また、その戦略に基づいてどのような活動をおこなうか。

4) スケジュール、担当者
 立てた行動計画を、誰が、いつ(までに)、どのようにおこなうか、を明確にしておく。また、どのペース・タイミングで進捗状況をチェックするか、も設定。

5) 収益計画・資金計画
 目標の売上、それにかかる原価、活動経費、などを計算し、利益を算出。もちろん、最終的にプラスになるようにします。

そして、そこでかかる費用をどうまかなうのか(自己資金で足りるのか?借入が必要なのか?)も計画に含めます。

6) 目標(ゴール)の明記
 いつの時点で、どうなっているのか、をはっきりと数値で設定します。通常、中・長期(3〜5年)と、短期(1年)で設定します。

目的別の種類

 事業計画書の種類には、企業の規模や、事業の種類によって異なる部分があり、それらの区分もありますが、それについては割愛します。

 ここでは、上で書いた本来の役割に加えて、特定の目的がある場合の種類について紹介したいと思います。

1) 金融機関からの融資目的
 事業の遂行のための資金を金融機関から借り入れする場合、その資金の用途について説明する必要があります。

その場合、事業計画書を用いるのですが、金融機関は、返済の見込み、すなわち収益の確実性を重視します。

したがって、事業が堅実なものであることや、終始計画の妥当性を強く示せるような内容、書き方が必要になります。

2) 投資家からの出資目的
 一方、投資家から資金を得る場合、融資ではなく、出資という形態が多いと思います。

その場合、投資家は、出資した資金がどのように増えて返ってくるか、を重視するので、堅実性よりも、成長性、発展性を強調するような書き方が必要になる場合が多くなります。

3) 補助金・助成金取得目的
 補助金や助成金には、それぞれの目的・コンセプトがあるので、それに合わせた表現が必要になります。

特に最近では、最低賃金を規定以上に上げる、とか、DXへの取り組み、地域イノベーションへの貢献、など、政府機関の取り組みに即した活動をアピールすることが採択につながるため、そのような内容を盛り込んだものが必要になります。

落とし穴あり:本来の役割を忘れた計画書

 このように、目的ごとに内容や表現を工夫する必要があるのですが、先に書いた通り、事業計画書には、『これから進める事業のゴールに到達するための手引き』という、本来の役割があります。

しかし、それを忘れてしまった計画書が多々存在します。

 融資、出資や補助金獲得など、目の前に別の目的があると、それを獲得するために、本来の役割を失念して、目の前の目的がゴールになっているような計画書を作成してしまうケースがあります。

どういうことかというと、

・ 融資を獲得するために、実は達成が難しい売上や利益計画を立てる
・ 出資を得るために、自社の身の丈に合っていない事業拡大を計画する
・ 補助金の採択のために、できるかどうかわからないようなデジタル化や設備投資計画を立てる

などなど。

こういった、実情を鑑みない計画書は当然、役に立たず、社員やチームメンバーのコンセンサスも取れていないので、周囲の協力が得られず、計画書の通りに進みません。最悪、事業が破綻します。

書類としてはうまく体裁を整えて、融資・出資や補助金が得られたとしても、その後に地獄が待っているわけです。

事業を成功させるために必要な事業計画書ですが、このように書き方を間違えると大変なことになります。

そうならないように、事業計画書本来の役割を忘れず、そこから逸脱しないように、確実に実行できる計画書を作成しましょう。

まとめ

  • 事業を進めるためには、関係者が理解し共有できる事業計画書が必要。
  • 事業計画書の本来の役割は、『事業をゴールに到達させるための手引き』
  • 本来の役割を忘れた計画書は、役に立たないばかりか、あとで困ったことになる。

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