コーゼーションとエフェクチュエーション

 これまで私は多くの事業者のかたに、目標や計画を立てることの必要性を伝えてきて、一緒に計画を立てるお手伝をしております。また、過去の記事:「目標や計画は必要か?」でも、そのようなことを書いております。

その点について、考えは変わっていませんが、最近、『未来の予測が困難』と言われる現代において、従来の考え方と違う、『エフェクチュエーション』という理論が注目されるようになっています。

 それに対し、従来型の理論が『コーゼーション』です。

これら、対極的とも見える考え方ですが、では、従来の考え方はもう古く、新しいやり方にすっかり変わってしまうのか。そしてこれまでのやり方はもう今後は通用しないのか。

 ここでは、これらの理論について整理し、今後の取り組みかたを紹介したいと思います。

目次

コーゼーションとは

 コーゼーション(Causation)とは、直訳では、『原因、因果関係』という意味です。

 ビジネスシーンでは、意思決定のプロセスとして、売上額等の目標を設定し、それを達成するために最適な手段を検討していく、という目標設定型の逆算的なアプローチのことを指します。

 コーゼーションのメリットとしては、

『意思決定がブレない』

ということがあります。コーゼーションは、明確な目標を設定し、その目標からブレていないかどうかを判断しやすいので、目標達成のために不必要な意思決定がおこなわれにくい、ということがメリットになります。

 逆に、デメリットとしては、

『仮説がはずれたときのダメージが大きい』

ということがあります。コーゼーションは、未来を予測した仮説をもとに目標とそれにつながる意思決定をしていくため、未来予測(仮説)がはずれた段階で、大きなダメージを受ける可能性があります。

また、明確に設定した目標が現実とズレてしまったときにすぐに変更しづらく、気を逃してしまう危険性もあります。

エフェクチュエーションとは

 エフェクチュエーションは、『効果的な』という意味の形容詞 “Effectual” に、『〜化』という意味になる接尾語 “-ation” を組み合わせた言葉です。

日本語にすると『効果的になるようにしていく』みたいなニュアンスになります。

これは、目的設定型の逆算的アプローチであるコーゼーションとは対極的な考え方で、自分ができることや持っている資源(知識・経験・スキル・人間関係など)から新しい目標を見つけていく、というものです。

 エフェクチュエーションは、不確実で未来予測が困難な状況下でも、自身がコントロール可能なことに集中することでアクションを起こすことができる、ということが特徴となります。

ただ、コーゼーションが、明確に目標を定めることで企業成長を一気に加速させることができる可能性を持つのに対し、エフェクチュエーションは、手段ありきのプロセスであるので、一気に高い目標を達成する、という可能性は低いかもしれません。

エフェクチュエーションの5原則

  1. 『手中の鳥(Bird of Hand)』の原則
    自分が持っている資源、すなわち、知識・経験・スキル・情熱・人とのつながりなど(=手中の鳥)が何か、を理解し、そこから『何ができるか』を考える。
  2. 『許容可能な損失(affordable Loss)』の原則
    期待するリターンを最大化できるよう行動するのではなく、許容可能な損失を計算して、その範囲で行動する。
  3. 『クレイジーキルト(Crazy-Quilt)』の原則
    形や柄の違う布を縫い付けて1枚の布を作る(=クレイジーキルト)ように、顧客・競合他社・協力会社・従業員、などさまざまなつながりをパートナーと考え、一体となってゴールを目指す。
  4. 『レモネード(Lemonade)』の原則
    レモン(=食べられないもの)があったとしても、それをレモネードにしたら食べられる。
    →使い物にならない欠陥品や失敗作であっても、工夫を凝らして新たな価値を持つものに変えてやればよい。
  5. 『飛行機の中のパイロット(Pilot in the Plane)』の原則
    予測不能な状況で、常に数値を確認し臨機応変に対応をするパイロットのように、外部環境の変化に対し、コントロール可能なことに集中することによって予測を不要とし、コントロールによって望ましい結果を得る。

それぞれのアプローチと取り入れかた

 コーゼーションのアプローチは、

目標を設定し、そこから製品・サービスと市場やターゲットを設定し、分析をおこない、それをもとに戦略や計画を策定し、それに従って実行する、

という、目標から逆算的に行動を作るアプローチです。

 一方、エフェクチュエーションは、

『自分は何ができるか(What can I do)?』という観点から、誰もが持つ3つの資源、

① 自分は何者か(Who am I)?:自分の特質や魅力、強み
② 何を知っているのか(What I know)?:自分が持つ知識や経験の質と量
③ 誰を知っているのか(Whom I know)?:自分の持つ人脈、ネットワーク

を洗い出し、そこから新たな手段や製品、市場を模索する、というアプローチです。

 このように、考え方やアプローチは対極にあると言えますが、決して対立するものではなく、またどちらか一方を選択するのでもなく、両方とも取り入れるべき考え方です。

 エフェクチュエーションについて、『とにかくスタートさせて、走りながら考える』というイメージを持っている人も居ますが、そういうことではないと思います。

 自分が持つ資源に集中することでスタートしやすい、実行してからの状況の変化に対応しやすい、という特徴から、まずスタートして走りながら考えるイメージがあるのだと思いますが、コーゼーション的なアプローチでも、当然走りながら調整や変更はします。

逆に、エフェクチエーション的にアプローチしても、必ず目標の設定は必要になります。

よく、『0→1のフェーズではエフェクチュエーションが、1→10のフェーズではコーゼーションが有効』と言われていますが、

要するに、目標を明確に設定しにくい状況では、まず自分の持つ資源を把握しスタートしやすくして、進捗に応じて目標を設定していく、という使い分けが必要だと感じます。

重要なことは、どちらか一方を選択するのではなく、常に両方のアプローチを意識し、状況に応じてバランスをとっていくことです。

まとめ

  • コーゼーションは、目標からの逆算するアプローチ、エフェクチュエーションは自分の資源に集中するアプローチ。
  • コーゼーションとエフェクチュエーションは対極的なアプローチだが、対立関係ではない
  • コーゼーションとエフェクチュエーションは、どちらかを選択するのではなく、常に両方を使い分けバランスをとる

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