前回記事:顧客ポートフォリオマネジメント(1) から、
『顧客ポートフォリオマネジメント』(Customer Portfolio Management、以下CPM)
についての紹介をしています。
前回は、認識を共有するための事前説明のような内容でした。
ここから、CPM理論の内容について紹介していきます。
前回もお伝えしたように、この内容は、『社長が知らない秘密の仕組み』(橋本陽輔:著、ビジネス社)という本の内容を参考にしています。
CPM理論の定義
この理論では、まず顧客の種類を下のような5つのパターンに分けます。
それから、購入金額という要素に加え、「在籍期間」「離脱期間」という要素も加え、立体的に分類します。
この点が、RMF分析には無い概念です。
「在籍期間」「離脱期間」の定義は以下の通りとします。
・ 在籍期間 = 最終購入日 ー 初回購入日
・ 離脱期間 = 現在 ー 最終購入日
そして、これにいくつかの条件をつけて顧客データを算出し、それぞれの顧客が上の5つのパターンのどこに当てはまるか、を見ます。
そのとき、離脱期間の長さによって、5パターンの顧客をさらに、それぞれ「現役客(離脱期間が短い)」、「離脱客(離脱期間が長い)」という2種類にわけます。
すなわち、合計10種類の分類になります。
具体的な定義としては(記載の数値は参考値。自身が扱う商品・サービスの単価などによって異なる)、以下の通りです。
これを、図式化すると下図のようになります。
ここまでは、なんとなくイメージできたでしょうか。
「流行客」か「コツコツ客」か
最終的に増やしたいのは、「優良客」、それも、「優良現役客」ですね。
でも、ユーザがいきなり優良客になることはありません。
まず1回購入してくれる「初回客」、それから2回目の購入がある「よちよち客」を経て、少しずつ購入回数や金額が増えていくことは、容易にイメージできるでしょう。
そして、その後、その「よちよち客」を、どのように育てて、「優良客」にしていきましょう?
「よちよち客」が、その後、「流行客」になるか、「コツコツ客」になるか、の2つのパターンが考えられます。
キャンペーンやバーゲンなどのイベントを打てば、そのときに大量に買ってくれるのが「流行客」です。
一方、毎回の購入金額は小さいものの、長期間にわたって定期的に購入してくれるのが「コツコツ客」です。
ちょっと考えると、短期間に高額(大量)の購入がある「流行客」のほうが、ちょっとずつしかお金を使わない「コツコツ客」よりも、良いお客さまのように思えます。
でも、CPMでは、「コツコツ客」のほうが大切だと考えます。
その理由は、
流行客は、一見良い客に見えるが、キャンペーンやプレゼントに反応するということは、他社が安い価格で売るとすぐに乗り換える可能性が高い。
一方、コツコツ客は、心に反応する傾向がある。その会社、商品が好きだから買っている。したがって、離脱率が低いと思われる。
ということです。
したがって、下図のように、すべての顧客は「初回客」→「よちよち客」のルートをたどり、そこからつのパターンに別れますが、
「よちよち客」→「流行客」のルートは、ここから→「優良客」に進む顧客は少ない。
「よちよち客」→「コツコツ客」のルート、「優良客」の大半はここから上がってくる。
ということになります。
そして、これが、従来のRFM分析との大きな違いです。
RFM分析では、R・F・Mそれぞれのポイント、すなわち、直近でどのくらいの頻度で、どのくらいの額の買い物をしたか、という点数が高い顧客に対し集中してフォローする、という考え方です。
これは、顧客維持コストは「費用」と捉える考え方に基づいています。
一方で、CPMでは、顧客維持コストは「投資」と考えます。
顧客ポートフォリオの活用
ここからは、顧客ポートフォリオの使い方について紹介します。
① 顧客ポートフォリオ明細書をつくる
・ 顧客ごとに、在籍期間と離脱期間を算出
・ 算出結果と、累計売上をもとに、各顧客を分類(前述の10種類のどれかに当てはめる)
・ それを一覧表にまとめる
という手順で作成します。
② 全員分ができたら、集計表をつくる
例)
③ 集計表のデータをグラフ化
例)
④ これを毎月おこない、変化をみる
だいたい、6-7ヶ月ほど続けると、「顧客から見た自社の姿」の変化がわかってきます。
円の直径がどんどん大きくなって、右上に動いているのが理想です。
⑤ 各項目の増減数と増減率を把握する
変化を表にすると、各項目の変化のしかたで、その期間の動向がわかります。
⑥ コミュニケーションで離脱客を呼び戻す
ポートフォリオ明細書で離脱客を確認し、離脱期間が短いうちにフォローします。
ただし、顧客分類層により、フォローのしかたが異なります。
・ 初回/よちよち離脱客:商品情報を与える
商品のことをまだあまりよく知らない可能性が高いので、正しい商品情報を与え、お客さまを育てます。
・ コツコツ/優良離脱客
すでに商品やサービスのことは十分理解していると思われます。それでも離脱した、ということは、会社の考え方や担当者の対応などに不満があった可能性が高いと考えられます。
そこで、商品へのこだわりや、生産者・スタッフの取り組みや想いなどを伝えてみるのが効果的です。
さらに、優良離脱客は、期待を裏切られた、商品に飽きてしまった、安全性・信頼性への不安が生じた、などの要因が考えられるため、それを取り除く情報提供が必要です。
また、コツコツ離脱客に対しては、クロスセリング(買ってくれた商品に関連する別の商品や、組み合わせ商品などを勧めること)も有効でしょう。
(逆に、初回客、よちよち客の、お互いの関係性ができていない段階で違う商品の紹介をするのは、購入を後悔させてしまう可能性があり、逆効果になります。)
そして、離脱客へのフォローの優先順位は、
優良客>コツコツ客>よちよち客>初回客 となります。
特に、「優良客離脱客」は、現役復帰したら、再び「優良現役客」の行動に戻る可能性が高いため、優良離脱客へのアプローチが最優先です。
まとめ
今回は、
・ CPM理論と顧客分類の定義
・ 優良客に進むルート
・ 顧客ポートフォリオの活用
・ 離脱客へのフォロー
について紹介しました。
次回以降では、顧客フォローの優先順位と方法、や、顧客ポートフォリオの分析のしかたについて、もう少し詳しく紹介してみたいと思います。
参考文献
『社長が知らない秘密の仕組み』(橋本陽輔:著、ビジネス社)
https://www.business-sha.co.jp/books/category04/item_a000030
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