以前の記事:『事業計画書の種類と落とし穴』で、目的によって事業計画書の内容・書き方がいくつか使い分ける、というようなことを書きました。
そこでは事業計画書の構成や内容自体にはカルく触れた程度だったので、ここで少し詳しく紹介してみたいと思います。
事業計画書の基本的な構成
一般的に、事業計画書は次のような構成パートに分かれます。
① 概要パート
② 分析パート
③ 戦略パート
④ アクションパート
⑤ 課題・リスクパート
⑥ 収益・資金計画パート
⑦ ゴールパート
目的・状況によって順番や細かい記載内容が変わることはありますが、最低限、これらの内容は必要です。
そして、基本的にこれらの内容を押さえておけば、計画書として使えると思います。
各パートについての説明
① 概要パート
ここでは最初に、自己紹介的な内容と、計画する事業の概要を紹介します。
具体的には、
・ 自身(会社)の概要や沿革、経営者や企画者の経歴、現在の活動内容、など(必要に応じて)
・ 自身(会社)の理念やビジョン
・ 計画する事業の概要と、提供する商品・サービスの説明
・ 事業計画に至った経緯
・ この事業の必要性・重要性
・ この事業の目標・ゴール
などを記載し、まず計画に入る前に、必要な事前認識・知識と、計画する事業の輪郭と重要性を共有しておいてもらいます。
② 分析パート
ここでは、事業に関わる自分自身と取り巻く環境について分析します。
● 商品・サービス分析
まずは、商品・サービスのコンセプトを整理します。『4P分析』という手法を使うのが一般的で、わかりやすいと思います。
“4P” とは、4つのポイントの頭文字をとったもので、それぞれ、
・ Product(商品) :何を売るのか
・ Price(価格) :いくらで売るのか
・ Place(流通) :どこで売るのか
・ Promotion(販促) :どうやって売るのか
を意味し、それぞれについて決めて、説明します。
● 自己(自社)分析
これは、SWOT分析が一般的で、自身を見つめ直す良い機会にもなります。
ただし、冷静に、客観的に自身のことを分析するのは、実は簡単ではありません。
● 市場分析
提供する商品やサービスのターゲットがどのくらいいるのか、を調べます。
活動するエリアにターゲット層(年齢、性別など)がどのくらい存在するのか、さらに、ターゲットの消費傾向や、流行などから、市場が成長・拡大する可能性があるのか、なども調べます。
ここは、かなり時間と手間がかかる部分です。
さらに、データの取り方や分析の仕方を間違うと、間違った方向に進めてしまうので、慎重にやらないといけない部分でもあります。
● 競合分析
ターゲットに対し、同じような商品・サービスを提供する人(企業)はどのくらい居るのか、いくらくらいで販売しているのか、など、競合になりそうな相手の情報を調べます。
競合には、直接競合と間接競合があります。
たとえば、自身がラーメン屋をやるとすると、同じエリアでラーメンを提供している店が直接競合です。誰かが、『今日の昼メシはラーメン食べたいなぁ』となったときに選択肢に上がる店です。
一方で、『昼メシは何にしよう?』となったときの選択肢、となると、うどんやパスタ、定食屋などの飲食店だけでなく、ファストフード店や、スーパー、コンビニなども、競合と言えます。
これらが、間接競合です。
こうやって、競合となり得る相手を洗い出し、全てに対し、自身や商品・サービスが優れている点/劣っている点、自身が選ばれる理由/他者(他社、他店)が選ばれる理由、を列挙し分析します。
(分析については、以前の記事:『アイデアをカタチにできない!?』でも紹介しています。)
③ 戦略パート
上の分析で得た結果をもとに、事業の戦略を立てます。
先のSWOT分析の結果を使った、クロスSWOT というやりかたが一般的です。
外部環境の機会と脅威の中で、内部環境である強みをどう活かし、弱みをカバーするか、ということを考え、戦略を立てます。
そのなかで、『S x O』が、もっとも力を入れるメインの戦略となります。
具体的には、“機会”が示す、どんな需要に対し、自身が持つどんな“強み”を打ち込むのか、を意識した、ターゲット選定や、プロモーション方法、価格設定などの戦略です。
(この部分、書きだすと長くなるので、機会があれば別の記事で紹介したいと思います。)
④ アクションパート
ここでは、先に立てた戦略に基づいて、
・ 誰が = 担当、組織構成(組織図)
・ いつ(いつまでに) = スケジュール、期限、マイルストーン
・ 何を = 具体的な行動計画
ということを具体的に示します。
この部分は特に、外部に向けての説明だけでなく、実際に事業に関わるメンバーに対しての取説のような意味も持つため、
なぜその人が、
なぜそのとき(そのときまで)に、
なぜそのことを
やるのか、を納得できるような内容にする必要があります。
⑤ 課題・リスクパート
ここでは、事業遂行に際して、懸念するリスクや、乗り越えなくてはならない課題など、マイナス要素を洗い出します。
そして、必ず、それに対する対応策・解決策も示します。
(解決策が見つかっていないと、『この事業は心配だから、やめておいたほうが良いのでは』ということになりかねません。)
さらに、最もうまくいかなかった場合を想定して、その場合にはどの程度のダメージがあるのか、もしくは、どの程度のダメージになったら撤退や方向転換を考えるのか、ということについても考えておくべきです。
⑥ 収益・資金計画パート
ここでは、計画を数値化します。まずは収益計画。
通常、収益計画は、3〜5年分を表にします。
下のような感じで、各年度の、売上額、原価、経費、利益 を算出、設定します。
もちろん、これらの数値は、先に挙げた分析や戦略、アクションの内容と辻褄が合っていないといけません。
そして、この収益計画を実現するために必要な資金(初期投資と運転資金)をどう捻出するのか、についても示します。
通常、一部は自己資金、その他は借り入れや出資などになります。
その金額や入金先も具体的に決めておきます。
⑦ ゴールパート
ここでは改めて、
いつからスタートして、いつの時点でどうなるのか(どうなっていたら成功か)、というゴールを明確にしておきます。
その成功や成果の評価方法や評価基準についても示す必要があります。
事業計画で気をつけたいこと
以上が、基本的な事業計画書の構成ですが、作成にあたって注意しておかなくてはいけないことがあります。
そのなかで、基本的で重要だと思うことをいくつか挙げます。
● 具体的であること
熱意はものすごく伝わるが、具体性に欠ける内容のものがあります。
『積極的に取り組む』、『徹底的にアピールする』など。
最近では、『デジタル化する』、『合理化する』などもよくありますね。
で、実際は何をどうするの? というのがよくわからない、気合いだけの感じ。こういうのは、まず実行されません。
● 現実的であること
たまに、夢のような計画を立てる人がいます。
気持ちはわかるのですが、明らかに現実味に欠ける計画は、計画にはならないでしょう。
具体的には、
・ 売上や利益の数字(どうやってそんな利益が出る?どんな計算?)
・ タイムライン(そんな短期間でそんなことできる?)
・ 能力・人員キャパ(それをやろうと思ったら、いまの10倍くらい人が必要になるけど?)
・ 資金注入(そんなデッカい投資計画、どこにそんなおカネがある?)
という感じです。実現可能じゃない計画は、無いに等しいですね。
逆に、超現実的、というかガチガチの保守的な計画の場合もあります。低すぎる目標というか。
安全ではあると思いますが、成長性を考えると、計画はやはり、ある程度チャレンジングな部分もないといけないと思います。
リスクゼロ、ということは、失敗もないけど、成功もしない、ということになるので。
● 魅力的であること
事業を進めるには、いろんな人の協力が必要になるものです。
なので、『一緒にやりたい』『応援したい』という事業になっているか、ということも大事だと思います。
● 持続可能であること
何かしらムリして、一時的に達成できる、うまくいく、というような計画だと、遠からず破綻します。
計画通りに進めば、ずっと続けられる、というような内容である必要があります。
そして、計画は最初に立てて終わり、ではありません。
状況はどんどん変化します。それに合わせて、計画も見直す必要があります。
そのときに、どう変更・修正するかを判断しやすいように、ビジョンやコンセプトは最初にはっきりさせておき、ある程度長いスパンを想定した計画にしておくことも必要です。
● 関係者が納得していること
経営者が、自分の想いだけで計画を立て、いざ実施、となったら、社員が誰もついてこない、やりたがらない、というケースも見たことがあります。
そうならないように、計画立案の初期段階から、情報を共有して、関係者がみんなでコンセンサスを取りながら進めることが大事です。
● 客観性があること
自身(自社)の製品などに対する想いが強すぎて、調査したデータなどを自分の都合の良いように解釈したり、ネガティブな要素から目を背けたり、見落としていたり、というようなこともあります。
そうならないように、第三者的な目で、少し俯瞰で見ることができる立場の人の意見も聞くようにするのが良いと思います。
まとめ
- 事業計画書の基本的な構成と必要な内容を把握する。
- 計画書は、具体的、現実的であること。
- 計画書は、魅力的で、関係者の理解・協力を得られること。
- 計画書は、持続可能で、定期的にチェック、軌道修正できるものであること。
- 計画書作成は、必要に応じて第三者の客観的な視点での意見も聞いてみるのも良い。
このようなことに留意して、計画書を作成してみてください。
最初は、うまくいかないかもしれませんが、何度も繰り返しやっていくと、そのうちコツがつかめてきます。
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