前回記事では、
まずは小さく動いてみることが、思考の整理になり、
迷って動けないことの解決につながる、
ということをお伝えしました。
今回は、“動く”ということを、どう捉えるか、についてお話しします。
動くというのは、計画を立てて、実行に移す、ということです。
そのときに多くの人が感じるのが、
「思った通りにいかない」
という現実です。
けれど、それは失敗ではなく、“計画が動き始めた証拠”でもあります。
大切なのは、「計画を守ること」よりも、「計画を動かしながら整えること」。
計画は、完璧に作るものではなく、動かして磨くものです。
最初から完璧な計画を立て、それに寸分違わず完璧に実行する。
そんなことは不可能です。
だから、計画に従って、設定したゴールに向かって動きながら、
その計画自体も修正して整えていくものなのです。
1. 計画は、実行して初めて意味を持つ
どれだけ綿密な計画を立てても、動かしてみると必ずズレが出ます。
時間の読み違い、予想外の反応、想定外のトラブル。
紙の上では、すべてがきれいに並んでいます。
でも、実際の現場には、人の気持ちや状況の変化、偶然の出来事が絡みます。
だからこそ、計画を「実行して確かめる」ことが、何より大事になります。
最初から“うまく回す”のではなく、
“どうすればうまく回るか”を見つけるために動かす。
たとえば、想定した手順どおりに進めても、
思ったほど効率が上がらないことがあります。
そんなときは、
順番を変えてみる、
関わる人を変えてみる、
方法を少し簡略化してみる。
そうして実際に“動かしながら”確かめていくうちに、
どこにムリやムダがあるのか、どんな条件でうまく流れるのかが見えてきます。
その視点に立つと、
実行は「結果を出す行為」ではなく、
「整えるための観察と試行」になります。
そう考えると、実行がずっと気楽になります。
2. 計画を“実験”と捉える
計画を、完璧な設計図だと考えると、
修正や変更を「間違い」として受け止めがちです。
でも、実際の仕事やプロジェクトは、常に変化の中にあります。
だからこそ、計画を「実験」として扱うほうが現実的です。
“この方法でうまくいくかを試してみる”
そのくらいの感覚で始めると、柔軟さが生まれます。
そして、うまくいかなかったとしても、
それは失敗ではなく、
「結果が得られた」ということです。
たとえば、
ある手順を変えたら効率が下がった。
ある伝え方をしたら反応が鈍かった。
このとき大事なのは、
「何が原因で、どんな結果になったのか」を観察すること。
「この条件ではこうなる」というデータがひとつ増えた、
というだけで、その経験は確実に次に活きます。
実験というのは、正解を当てる作業というだけではなく、
“再現できる条件を見つける作業”でもあります。
だから、やってみて得られた反応をもとに、
「もう一度やるならどう変えるか」を考える。
その繰り返しによって、計画は現実に合う形に整っていくのです。
つまり、動かすこと自体が学びのプロセスであり、
動きながら修正していくことが、
計画の完成度を高めていく行為なのです。
3. “計画通りに進まない”を前提にする
多くの人が、「計画通りにいかないこと」をストレスに感じます。
でも、最初から“ズレるもの”として設計しておけば、そのストレスは大きく減ります。
ここで大切なのは、ゴールを変えるのではなく、
ゴールまでの道筋を柔軟に変えるということです。
最終的に目指す地点は、最後までブレてはいけません。
一方で、その過程にある“マイルストーン”や“進め方”は、
実行の中で変化させて構いません。
たとえば、
・スケジュールは「確定」ではなく「検証のための仮置き」
・成果目標の数字は「固定」だが、その達成手段は「調整可能」
・作業フローは「完成形」ではなく「改善し続ける試作品」
こうした前提で進めると、ゴールへの集中力を保ちながら、柔軟に対応できます。
ズレが起きたら、それを“失敗”ではなく“情報”として受け取る。
「なぜズレたのか」「何を修正すれば戻せるのか」を冷静に見直す。
そうすることで、ゴールへの精度が上がっていきます。
つまり、“計画通りに進まない”という前提は、
あきらめや妥協ではなく、ゴールに確実に近づくための柔軟な設計思想なのです。
4. 動きながら修正するためのコツ
計画を動かしていくと、必ず想定外のことが起こります。
うまくいく部分もあれば、思ったほど効果が出ない部分もある。
それらを次に活かすためには、小さく回すサイクルを持つことが大切です。
「計画 → 実行 → 検証 → 改善」――いわゆるPDCAの流れです。
とはいえ、難しく考える必要はありません。
一度回して終わり、ではなく、“止めずに回し続ける”ことが目的です。
特に意識したいのは、“C(検証)”の頻度を上げること。
一度の行動を大きな単位で評価するのではなく、
日々の小さな確認を積み重ねることで、早い段階でズレを発見できます。
たとえば、
・毎日5分だけ、自分の行動を振り返る
・週に一度、計画とのズレを軽くメモする
・小さな成果を都度チェックして次に反映する
このように小刻みに確認を入れることで、
大きな手戻りを防ぎながら、前に進むリズムが整っていきます。
PDCAは、精密な仕組みではなく、現実を整えるための呼吸のようなもの。
動かして確かめ、直しながら進む。
それを続けていくうちに、計画の“完成度”よりも“再現性”が高まります。
5. 柔軟さが、安定をつくる
ただし、PDCAのように一定のリズムで回すだけでは、
変化の激しい現場には追いつけないこともあります。
そんなときに意識したいのが、OODA(ウーダ)ループです。
「観察(Observe)→方向づけ(Orient)→判断(Decide)→行動(Act)」の流れ。
計画というより、“その場で状況を読み、動きを決める”ための思考法です。
たとえば、
・相手の反応を観察する
・状況の変化から、優先順位を見直す
・今の目的に合う判断をする
・そして、すぐに動く
この一連の動きを速く回すことで、
変化に即応しながらも、軸を失わずに進めることができます。
つまり、PDCAが「仕組みを整える」サイクルだとすれば、
OODAは「現場で反応する」ループ。
どちらか一方ではなく、両方を組み合わせることで、
安定した行動力と柔軟な判断力の両立が可能になります。
柔軟に動ける人ほど、結果的にブレない。
それは、変化を受け止める“余白”を持っているからです。
柔軟さとは、安定の裏側にある力なのです。
6. まとめーー循環する実践
計画は、作ったら完成、というものではなく、動かして磨くもの。
動かす中で見えてくるズレを修正し、また動かす。
この循環こそが、成果を生むプロセスです。
PDCAは、計画を安定的に回す“仕組みの循環”。
OODAは、変化に即応する“感覚の循環”。
この二つを組み合わせることで、
計画は生きたものになり、行動はぶれない軸を持ち始めます。
「計画を守る」でもなく、「感覚で動く」でもない。
“計画を動かしながら、感覚で確かめる”。
その二つの循環が重なったとき、
実行力と柔軟性がひとつにつながります。
そして、それを続けていくことで、
“整えるために動く”という感覚が、
次第に“動くことで整っていく”
という自然なリズムへと変わっていくのです。
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過去記事:「思考を外に出すと、動き出す ― 書く・話す・描くで、“現実化”が始まる」
「見える化で、関係が見えてくる ― 思考を構造化する“整理の技術”」
「構造を戦略に変える ― 計画の筋道を描く」
外部記事(note):「動かすことで見えてくる ― 小さな行動が大きな流れをつくる」
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